解说一 《时之悲》——描绘人性宿命与虚无的本格推理小说

玉田诚/文

(日本推理小说评论家、第一届岛田庄司推理小说奖评委)

天蝎小猪/译

作为一部本格推理小说,《时之悲》不仅仅有典型的“挑战读者”式的设谜、解谜环节,还在有血有肉的主要登场人物身上安排了一场悲情剧。日本推理小说自“新本格”以来的作品,常常忘记纯粹的小说谜团的重要性而沦为只讲究奇技**巧的游戏。本作通过侦探的细致推理来指明事件的真相,藏于各个角色背后的悲哀图景也逐渐鲜明地浮现,很好地诠释了本格推理的要旨。对于这类小说来说,谜团是首先需要考量的元素,本作吸取诸多名作优点,以精彩的“雪地密室”诡计和细节取胜的多处伏笔,生动地描绘了一出人间悲剧,可以说是漂亮地体现着本格推理的理想状态吧。

光这样说明可能各位不是太明白,那么举个例子好了:试着回顾日本这数十年来的推理小说发展史,我们将发现那些经得起历史涤**和筛选的都是些怎样的作品呢?有太多作品被历史所遗忘,只有那些以本格推理诡计为工具、漂亮书写出深刻人性的作品才是永久弥新的杰作,毕竟独创性的诡计并非唯一的评价标准。在我看来,这本《时之悲》就是这样一种具有历史厚度、不必担心为人忽视的力作。

按照书名中的“时”这个字眼来观察,本作是所谓的“历史推理小说”,描述的是过去的某起事件在历经六十年的蹉跎岁月之后被完美解决。故事采取了双线交错叙述的结构,一边是大家族中发生不可思议的连续杀人事件的“过去时点”,一边是名侦探杜撰对该事件进行走访调查的“现在时点”。满富“不可能犯罪”意味的神秘事件中隐匿着的宿命孽缘和悲怜人性,在尘封半个多世纪之后,以杜撰的逻辑推理作结,展现于读者面前的正是这一场事件所带来的无尽伤痛和悲哀,让人不得不感慨于“天随人愿古来稀”。

在名侦探的解谜“瞬间”,六十年的“悠长岁月”被压缩在短短百十页的篇幅之中,这种构图的戏剧性变化,大概只有这样优秀的本格推理作品才会拥有吧,而依附于《时之悲》标题之下的则是“人性的宿命和虚无”这一沉重的主题。

重复一遍。本格推理既是“谜题”,也是“小说”。遵循着“挑战读者”原则,要让读者对案件的真凶及其巧妙的行凶方法展开推理。此外,对真相展开推理的过程中,从过去到现在的漫长岁月里,登场人物究竟又背负着怎样的“宿命”——有关这一点,也需要众位展开一番思考。还有,同时也希望读者们发挥想象,设想一下经由越过真凶的奸计之后出现的这种“宿命”,案件之“后”,他们又将会踏上一条怎样的坎坷道路。

作者打破常规,故意将案发“后”到现在的历程略去不写,只是通过侦探的推理,描绘出“过去”的案件。然而本作的独到之处,就在于通过不断重复命运的无情操弄,来将“未曾写明的过去”这一点给展现出来。尽管采用了作为通过推理案件之谜的真相来揭示所有一切的本格推理这种严谨的框架结构,但《时之悲》这个书名中所暗示的“未曾写明的过去”与“宿命”的身影,任由读者自行发挥想象的结构,也可以说是向读者对故事行进中各种元素的解读能力的一种挑战。

通过本格推理的手法进行叙述的本作中,既有对罪行的含蓄声讨,也有对人性的悲悯感怀——还有着大陆本格推理的未来!

附原文:

『時之悲』――人間の宿業と虚無を描ききった本格ミステリ

『時之悲』は「読書への挑戦状」が添えられたパズル志向の本格ミステリでありながら、ここには血肉の通った登場人物たちの悲哀のドラマがある。日本の新本格以降の作品には、小説という本分を忘れて単なるパズルやゲームへと成り下がったものも散見される。本作では、探偵の精緻な推理によって事件の真相を開示し、背後に隠されていた登場人物たちの悲哀の構図が鮮やかに浮かび上がらせる。本格ミステリはパズルである以上にまず小説であるという根本に立脚し、トリックや伏線、推理といった本格ミステリの様々な趣向を用いて人間のドラマを活写した本作こそは、本格ミステリの理想像を見事に体現しているといえるだろう。

日本のミステリ史のここ数十年を振り返ってみるだけでもいい。歴史的傑作と評価されるはどのようなものだろうか。そう評価される理由は何もトリックの独創性だけに限定されるものではない。それらの作品はいずれも本格ミステリとしての技法を駆使して人間のドラマを見事に描き出している。そして本作『時之悲』もまた、そうした歴史的な作品に連なる堂々たる風格を供えた作品である。

タイトルに「時」という言葉が添えられている通り、本作では過去の事件が六十年もの歳月を経て解決される課程が描かれる。ある一族にまつわる不可解な連続殺人事件を描いた過去のパートと、探偵である杜撰がこの事件を調査していく現在のパートとを交錯させ、過去の事件が一族にもたらした非業と六十年という長い歳月の落魄が、探偵の推理によって繙かれるとき、読者は、一族の悲劇を描いた大河小説的結構がある人物の悲哀のドラマへと変転する瞬間を目の当たりにすることだろう。

探偵による謎解きの「瞬間」が、六十年という「長い歳月」を圧縮し、物語全体の構図を劇的に変化させる――本作では、こうした本格ミステリならではの技法によって、『時之悲』というタイトルによって示された「人間の宿命」という重い主題を鮮やかに描き出している。

繰り返そう。本格ミステリは「パズル」である以上に「小説」である。「読者への挑戦状」に従って読者もまたこの真犯人とその巧緻な犯行方法を推理してもらいたい。しかしまた、その真相を推理する課程で、過去から現在に到るまでの長い歳月は登場人物たちにどのような「宿命」を強いたのか――これについても是非とも考えてみてほしいのだ。そして真犯人の奸計を超えたところに出現するこの「宿命」によって、事件の「後」に彼らが辿ることになった数奇な運命に思いを馳せてみてほしい。

作者は、事件「後」から現在に到るまでの変転を敢えて書かず、探偵による推理によって「過去」の事件と「現在」のみを描き出す。しかし本作の醍醐味は、「宿命」という言葉に重ねることによって見えてくるこの「書かれなかった過去」にある。事件の謎の真相を推理によって明らかにするという本格ミステリとしての堅固な結構を採用しながら、「時之悲」というタイトルに暗示された「書かれなかった過去」と「宿命」の姿を読者の想像力に委ねるという本作の結構はまた、読者の読解力を試しているものともいえるだろう。

本格ミステリの技法によって描かれたこの物語には、人間の叫びがあり、悲哀があり、そして大陸の本格ミステリの未来がある。